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中国では月36時間を超える残業は違法か?

先日、あるクライアントの日本本社の顧問弁護士(日本人)が、その日本本社の管理部門に「中国では月36時間を超える残業をさせてはならない」と説明し、慌てたクライアントが弊社にセカンドオピニオンを求める、ということがありました。私としては、この10年で同じ質問を恐らく30回以上受けているので、別に慌てることはないのですが、クライアントにとっては初めて聞こえてきた話であり、それを日本の顧問弁護士から言われたとなれば、すぐさま解決しなければならないテーマと感じられたのでしょう。

まずは、日本の弁護士が過敏に反応した「労働法」の規定は、以下の条文です。

「労働法」(1995年1月1日施行主席令第28号、2009年8月27日最新改正施行)
第41条 雇用単位は、生産経営の必要により、労働組合および労働者と協議を経た後に、労働時間を延長することができる。ただし、一般的に1日あたり1時間を超えてはならない。特段の事由により、労働時間の延長を必要とする場合は、労働者の身体の健康を保障するという条件の下で、延長する労働時間は1日あたり3時間を超えてはならない。ただし、1ヶ月に36時間を超えてはならない。

ココだけ読むと、「特段の事由」がある場合に限り「1日3時間以下、かつ、1ヶ月36時間以下」までは残業させてもよいが、これらの時間を超過してはならない、と読めます。

しかし、中国に数百万社あるであろう製造業の現場において、各社が毎月36時間以下の残業代しか払わなければ、稼ぐために出稼ぎに来ている5億人の工場労働者が、暴動を起こすでしょう。最低賃金を低めに設定し、逆に、残業代の割増率を高くする(*)政策をとっている中国の労働行政は「ドンドン働かせよ、そして、ドンドン払ってあげなさい」が基本原則なのです。
(*=残業は1.5倍、休日出勤は2.0倍、祝日出勤は3.0倍)

よって、毎月36時間を超える残業をやらせていても、「労働組合および労働者と協議」を経た上で、法定どおりの割増賃金を払っていれば、特にお咎めがないのが中国全土の現状です。地方の当局(労働行政部門)の中には、管轄下の各社の残業時間が長いことを上級組織から指摘されて叱られないように、「60時間を超える部分の残業代は、他の名目の手当として支払いなさい」との「ご指導」をやっているところもあります。

「労働組合および労働者と協議」ですが、毎月「協議」を開催するのもタイヘンですので、「会社からの強制労働ではない」ことを明確にする目的で、毎月従業員から(例えば)「今月は60時間まで残業することに同意します」という書類にサインをさせるか、もしくは、毎日の残業簿に「本日は自分の意思で残業しました」というサインをさせる、などの対策を講じておいてください。もちろん、割増賃金もキチンと支払ってください。

労働行政は、法律の条文どおりに運用されてないことがよくあります。これは「中国がイイカゲンな国だから」起こることではなく、どこの国でも、もちろん日本でも、起こっています。だから、中国の過去と現状をしっかり踏まえた上で近未来予測までできる専門家を、脇にキープしておくことをお勧めします。■

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