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中国から日本の銀行に支払う利息への源泉課税 <研究事例>

Q)中国現法が日本の銀行からローンを借りています。その利息を日本に送金する場合、どのような税金がかかりますか?

A)増値税6%と企業所得税10%がかかりますので、この金額を源泉徴収して、日本に送金します。
 (少し長いですが、頑張って最後まで、ゆっくり読んでください。必ず理解できます。)

中国現法が、中国に支店のない日本の地方銀行の本店からローンを借りた場合などが、これに該当します。

まず、この問題を正確に理解するには、増値税6%と企業所得税10%の「納税者は誰か?」ということを把握しなければなりません。この場合の「納税者」は、中国現法ではなく日本の銀行なのです。但し、中国の国家税務局が徴税のために日本の銀行にアクセスするのは手間がかかるので、送金元である中国現法が納税する前に、源泉控除させている(=源泉控除しないと送金させない仕組みになっている)のです。

更に、2016年5月1日施行の「営業税から増値税への徴収変更試行を全面的に推進することに関する財政部と国家税務総局の通知」(財税[2016]36号)、いわゆる「36号通知」より前は、増値税ではなく営業税であったところが話をヤヤコシクしています。(本稿では、古い規定には触れず、現行の新規定についてのみ解説します。)

(1)増値税について

では各論。まず、課せられる増値税は、利息を受取る日本の銀行が中国の国家税務局に納めなければならない税金です。日本の銀行は中国の非居住者ではありますが、中国現法に金員を貸し与え、中国現法がその金員を「中国で」使用して便益を得た対価を(利息として)収受するのですから、「一般サービス業」として本来ならば6%の増値税を納税しなければなりません。利息総額は増値税込み(内税)と解されますので、よって中国現法は、送金する金額の「106分の6」を源泉納税(=日本の銀行の代わりに中国で納税してあげること)します。

ちなみに、「増値税は仕入税額控除ができる」のが一般的ですが、この日本の銀行が中国の税務局に納めた増値税(VAT=付加価値税)を、日本で仕入税額控除できるか否か、を中国の税務当局に聞いても回答は得られないでしょう。実は日本の税法では、納税者である日本の銀行は、単なる経費として損金に算入するだけで、仕入税額控除はできません。

一方、源泉納税した中国現法でも、仕入税額控除はできません。上記「36号通知」は、以下のように定めています。

「36号通知」の「附属書1.営業税から増値税への徴収変更試行実施弁法」
第25条 次に掲げる仕入税額は、これを売上税額から控除することを許可する。
 ④境外の単位または個人から、サービス・無形資産・不動産を購入した際に、税務機関または控除納付義務者から取得した天引税金払込の税完納証憑に明記されている増値税額
第27条 次に掲げる項目の仕入税額は、売上税額から控除してはならない。
 ⑥購入した、旅客運送サービス・貸付サービス・飲食サービス・住民日常サービスおよび娯楽サービス

よって、ロイヤルティ・商標使用料・役務提供費用の送金時に源泉控除した増値税は、仕入税額控除できますが、利息の送金時に源泉控除した増値税は、仕入税額控除できない、と覚えてください。

(2)企業所得税について

各論の2つ目です。課せられる企業所得税は、日本の銀行が中国現法に金員を貸し与えることで「中国での」便益を提供したのであるから、中国に徴税権が生じ、その税率は非居住者の企業所得税であるので、本来20%のところ軽減税率10%を適用する(「日中租税条約」でも、たまたま同じ10%になっている)、ということです。送金する金額の「106分の10」を源泉徴収します。

なお日本の銀行においては、この企業所得税の納税証明を毎年の法人税確定申告の際に税務所に提出すれば、「外国税額控除」として、中国に納めた企業所得税分が還付されますので、最終的には取り返すことができます。

(3)結論

利息の金額を106と仮定すると、送金する中国現法は、以下の税金(合計16)を源泉徴収して中国の国家税務局に納税し、その納税証明を中国の銀行に提示すれば、中国の銀行が残金90を送金してくれます。
増値税:  106×(6÷106)=6 … 日本の銀行では単なる損金であり、仕入税額控除はできない
企業所得税:106×(10÷106)=10 … 日本の銀行で外国税額控除できる

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。お疲れさまでした…。■

(写真は、香港の青馬大橋。日本の銀行からもシンジケーションローンで多額を貸し付けました。)
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