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経済補償金の計算に含める手当と残業代

Q)経済補償金は、「平均月収」×「勤務年数」で計算するとのことですが、「平均月収」には「手当」まで含めて計算するのでしょうか?

A)名称が「手当」(中国語で「補貼」)でも、「実費弁済的な手当」と「報酬性の手当」とでは扱いが異なります。また、上海市では残業代は含めないとの司法解釈が出ています。

(1)「平均月収」の基本理解

「平均月収」の基本的な計算方法は、「労働契約を解除または終了する日」の「直前の給与計算の締日」を1回目とし、過去に12回遡ったボーナスも含む(もちろん、個人所得税控除前の)総支給額を12で除して算出します。しかし法律上に「平均月収」の細かい定義はありません。地方によっても、労働局によっても、解釈・運用が異なっているのが現状です。

(2)含まれないと解されるもの・含むべきもの

例えば、「通勤手当」と銘打っていても、通勤に必要な交通費を実費として支給している場合には報酬とは言えず、算入しなくても問題はないでしょう。「昼食手当」も、法外に高いものでなければ、算入する必要はありません。
一方、名称はどうであれ、「技能手当」や「外国語手当」のように従業員の職能に対して支払われているのであれば報酬とみなされ、算入すべきと考えられます。もちろん、残業手当も基本的には算入の対象です。
しかし解雇の現場においては、法律の議論とは乖離したところで、従業員側が、あらゆる手当を含んだ「総支給額」を、基数算定の「平均月収」に含めるように求めてくることもありますので、現法側が正しい知識を持ち、早い段階でトラブルの芽を摘んでおくことが肝要です。

(3)上海では残業代は含まない

ところが上海市においては、「残業代は含めなくてよい」ことになっています。

「民事法律の適用に係る上海市高級人民法院の質問回答(2013年第1期)」
五、労働紛争事件において、経済補償金の計算基数を確定する際に、時間外賃金を含める必要の要否に関する問題
一部法院の報告によれば、一部の雇用単位では、時間外労働が既に常態となっており、労働者の労働報酬が一般的に最低賃金および時間外手当によって構成され、経済補償金の計算基数を確定する際に時間外手当を算入しなければ、雇用単位が支払う経済補償金が少なすぎるという問題が発生する恐れがある、とのことである。上海市高級人民法院の認識は以下のとおり。
(1)経済補償金はその性質から見て、雇用単位と労働者とが労働関係を解除または終了した後、労働者の損失を補填するために、または、雇用単位が負う社会的責任を果たすために、労働者に与える補償である。よって、経済補償金は、労働者の正規労働時間賃金を計算基数としなければならない。
(2)時間外賃金は、労働者が所定外の労働を提供して取得する報酬であり、正規労働時間内の労働報酬には該当しない。
(3)旧労働部の「『労働法』の徹底に係る若干の問題に関する意見」第55条および「労働契約法実施条例」第27条の規定から見て、経済補償金には時間外手当を含まないものと認識すべきである。
以上から我々は、経済補償金の計算基数を計算する際には、時間外賃金を含めるべきではないものと認識する。
但し、雇用単位が悪意により本来は正規労働時間賃金に計上すべき項目を時間外賃金に計上し、正規労働時間賃金および経済補償金の計算標準を減少させるに至った旨を証明できる証拠がある場合には、当該部分の「時間外賃金」を経済補償金の計算基数に算入しなければならない。

この「質問回答」は法律ではなく、日本の高等裁判所に相当する上海市高級人民法院が公開している「司法解釈」なのですが、「上海においては、各人民法院はこのように解釈しなさい」と指示した文書ですので、裁判になった場合にはこのとおりの判断が下されるものと言えます。

2016年3月の全国人民代表大会を経て、「ゾンビ企業の淘汰」を進めるために、今後は従業員の解雇が容易になる方向での法改正が行われるもの、と思われます。また、上海のような、会社側に有利な司法解釈を出す都市が増えることも予想できます。

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