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年次監査では見つからない現法の「不正」

ここ数年、「中国現地法人の不正発見と内部統制」というセミナーを日本と中国の各地で開催し、多くのお客様からご好評をいただいております。まずは、この場を借りて厚くお礼申し上げます。

このセミナーの案内を見て「最近、不正が増えましたよね」とおっしゃる日系企業幹部が多いのですが、不正摘発DD(デューディリジェンス)を多く手がけてきた立場から申し上げると、「不正が」増えたのではなく、「不正『に(ようやく)気づき始めた日本人』が」増えた、というのが実態である、と思います。

「現地化」「ローカル化」などのキーワードに則り、中国人従業員を現法の幹部に抜擢するケースが増えてきました。その際、現法側が何の内部統制も設けることなく業務を「丸投げ」して引継がせることが、不正発生の遠因になっています。不正を犯す人は悪い人なのですが、中国人に悪い人が特別多いわけではありません。日本人にも同じような比率で悪人はいます。それよりも悪いのは、内部統制をないがしろにしている現法側の管理体制である、と考えるべきでしょう。

不正を犯した従業員を見るに、①金銭の必要性、②不正が可能だという機会の認識、③現法に対する少なからぬ不満、などの要素が輻輳的に重なり合って初めて不正に手を染める、という事例がほとんどです。

①の対応としては、労使間の良好なコミュニケーションによって経済的悩みを吸い上げ、場合によってはカウンセリングを行ったり、現法から貸付けるなどのしくみをつくることが重要です。
②を防ぐためには、適切な職務分掌を行い、複数部署や複数従業員が共謀しないかぎり不正が行えない、という体制を構築し、かつそのチェック状況を現法内で公開することが重要です。
③を軽減するには、報酬のみならず福利厚生や風通しのよい職場環境づくりに注力することで、常に不満を吸収していくことが大切です。

不正の発覚は、内部告発によるものが大半です。告発制度を確立し、従業員に周知することをお勧めします。そのためには「告発した人の秘密と安全は完全に守られます」と公言できるシステムを構築していることが必須です。告発受付先に、社外の弁護士(中国律師)を起用するのも一案です。

告発で得られた情報には、現法幹部が迅速に分析した上で、早急に必要な対応を打ってください。また日本人幹部が不正に絡んでいるケースもあり得ますので、情報統制をしっかり意識しつつ、適切な措置を講じてください。C-SOXに基づく内部統制の確立は、中国での上場企業にのみ義務付けられたものですが、現法の体制構築の参考にもなります。

弊社では、不正発見と発生抑止のための「不正摘発とリスク査定DD」を承っています。通常の年次会計監査では、不正は見抜けません。また、会計士にそれを見抜く義務もありません。不正は、企業の利益を滅失させるばかりか、従業員の皆さんの幸福な生活や雇用機会まで奪いかねません。迷ったら、まずはIBJにご一報ください。

(写真はマレーシア王宮ですが、本文との関係はありません)■

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